UVIのバーチャル音源とエフェクトプラグインに関する研究開発の歴史は、皆さんが想像している以上に長く、現在も継続する長い道のりです。当社の開発チームは、10年以上にわたり、最先端のオーディオ処理を最もアクセスしやすい製品として提供するために取り組んできました。その中で、我々チームの取り組みを最も象徴する 7つの製品、HX-Oddy、Plate、 Sparkverb、Dual Delay X、Phasor、Opal、そしてDrum Replacerがどのように設計され、どのような意図があるのかをご紹介します。
VCF-4023の特徴の一つに、そのレゾナンスコントロールがあります。レゾナンスを上げると、フィルターはカットオフ周波数で自己発振を開始します。製品化においてこの効果を正確に再現する必要がありました。また、アナログ部品による微妙な非線形性やわずかな歪みが、暖かく豊かなキャラクターを生み出していることも外すことのできない要素です。
従来のステートバリアブルフィルターは通常、自己発振に到達するように設計されていません。4023の特異性は、そのフィードバック形成回路にあります。この回路は、抵抗とダイオードを巧妙に配置することで構成されており、レゾナンスパラメーターの値や信号の大きさに応じて、局所的にポジティブフィードバックまたはネガティブフィードバックを生成することができます。
モジュレーションへの動的な応答と、フィルターのカットオフおよびレゾナンスコントロールを通じて音色特性を形作る能力は、ARP Odysseyのサウンドにおける特徴的な音色と表現力豊かなフィルタリングを忠実に再現するための不可欠要素です。
これらの要素を詳細に取り組むことによって、現代のモデリング技術は4023 VCFの時代を超えた音楽性を保持し、その遺産がミュージシャンやサウンドデザイナーにインスピレーションを与え続けることを保証します。
Plateの主な目標の1つに、ユーザーが現実をはるかに超えた独自のカスタムプレートリバーブをデザインできるようにすることです。このことで、クリエイティブに利用できる完全にパラメトリックなプレートリバーブを完成させました。Plateは、最大20,000のモードを備えたリアルタイムフィジカルモデリングを採用し、物理ユニットの制限をはるかに超えた、別次元の深さと詳細さを実現します。
最も象徴的なプレートリバーブであるEMT140は、2m x 1m の大きな鋼板で作られた重いデバイスで、金属に固定トランスデューサーが取り付けられ、ダンピング量を制御するフォームが付いています。
• 物理寸法: 鋼板のサイズが自由に変更可能です。例えば、鋼板を細長くすることで、パルス波動伝播が鉄道網のように非常に分散した、スプリングリバーブに似た響きになります。
• 素材:鋼板の素材を変更することで、質量の違いによって伝播速度や不調和性を変化させ、異なる響きを生み出します。
• 張力(テンション):, 鋼板のしなりによって響きのモーダル周波数のチューニングを制御します。
• トランデューサーの位置:鋼板の振動を発動するドライバーとそれを拾うピックアップの位置の調整で、リバーブの音色を変えることができます。
あらゆる種類のダンピングは学術研究に基づいており、物理的な根拠に従います。使いやすいインターフェイスで直観的に再生しながら、ダンピングを設定し、ミックスをするまで、数回のクリックをするだけです。そしてアルゴリズムリバーブの豊かなコーラステールを物理モデリングの世界に持ち込むためのモードモジュレーションなど、実在しない魅惑的な機能もいくつか組み込みました。
もちろん、我々は、Plateが正確無比の実機エミュレーションであることも望みました。
のために、パリに所在する世界有数の著名スタジオに赴き、定番のEMT140(鉄板)とEMT240(金箔)を丹念に測定しました。そして、あらゆる種類の設定の測定値と厳密に一致するようにフィジカルモデルを調整するのにも時間を費やしました。
Sparkverbは、シンセサウンドに優れた、濃密かつ効率的で、高品質のリバーブを素早く作成するという、UVI社内のニーズから生まれました。 Sparkverbは、リバーブエフェクトを再定義することを目指したため、一般的なルーム、チェンバーやプレートなどのモード設定(空間選択)をはじめとする従来手法を採用せず、簡潔なパラメーターセットで、空間のスペクトラムを非常に小さなものから非常に大きなものまで、連続モーフィングするパラメトリック設計が特徴です。
Sparkverbの背後にある開発課題はまた、リバーブ効果のプリセットデザインを解明することでもありました。人によってはそれは黒魔術、あるいは物理学者の研究と感じるほど過酷なものでした。我々は、遡ること10年前にこのPreset Voyagerのインターフェースを先駆けて開発しました。このインターフェースは、機械学習を活用して、ファクトリープリセット間の知覚的距離を学習し、プリセット空間を2Dの表面にマッピングで、その知覚的な類似性を反映します。そして三角測量により、音響の可能性を簡単にナビゲートし、探索することができます。
リバーブデザインにおいて、ディケイカーブはとても重要です。Sparkverbはその形成を、従来のつまみ操作による調整を超えた、直観的で直接的、そして楽しく視覚的なインタラクションをユーザーに提供する革新的なグラフィカルインターフェースを導入しています。
最優先の目標は、Dual Delay Xがユーザーフレンドリーであり続けることであり、ミュージシャンが直観的なダンピングとフィードバックパラメーターを使ってパラレルやピンポンディレイを簡単に再現できるようにすることでした。そしてこれらの基本的な用度を超え、Dual Delay Xには画期的な機能を導入しています:各フィードバックタップ間での音場の回転です。
音場の回転という概念は、新しい種類のディレイ効果を探求する扉を開きました:
• 低速また高速回転エコー:LFOモジュレーションを使用せずにダイナミックなエコーを可能にします。
• 非調和コムフィルター:短いディレイを使用しmた、独自の非調和のテクスチャをもたらします。
• 散乱:2つのディレイラインがわずかに異なる場合に発生します。
Dual Delay Xの追加スパイスとして、信号経路に拡散(diffusion)、分散(dispersion)、劣化(degradation)、そしてテープサチュレーション(tape saturation)を追加しました。これらの要素でディレイ効果にさらなる形成や意図的な音質効果をもたらします。
Phasorが音に与える影響を理解するために、ファイズシフトの理解がとても重要です。音の位相(フェイズ)とは波形の位置を指します。波形のピークを遅らせることで、フェイズシフター効果が始まります。波形の位相をシフトするには、それを遅らせてから元の信号と混ぜ合わせます。このことで位相効果(周波数の相殺と倍増、知覚的な渦巻き効果など)が生成されます。多くのフェイズシフターは、渦巻き効果を強化するためにディレイの長さやフィードバックを調整できます。一部のフェイズシフターには、そのオーディオ効果をより細かく制御するために、フィルター処理されたフェイズシフト信号も提供します。
UVI Phasorは、最初にFalcon内蔵のインサート/センドエフェクトとして開発されました。様々なシンセサイザーやサンプルをPhasorに通すことで、ユーザーは本当に素敵なサウンドやトラックを作成できました。そして、Phasorを任意のDAWで、任意の音源で使用できるプラグインバージョンを求めるリクエストを即座に生まれ、それが日増しに増えていきました。
このシミュレーション自体は、いくつかのリダクションおよびプリレゾリューション技術を適用し、モデルを( 40個の部品から) 2 x 4次システムに縮小することに成功しました。この解決策は、演算効率が高くなるように特別設計されています。最後に、外部サイドチェーン、可変応答(アタック&リリース調整)、周波数応答補正(低域の影響や高域ブースト設定)、チューブドライブなど、現代の制作環境必須のものや便利なものなどの最新機能を追加して、独自の革新を持つ物理モデルを作成しました。
Drum Replacerは、レベルベースのトリガー検出という確立された手法を維持しつつ、シンプルで使いやすい画面のドラム差替ツールとして作られました。しかし、この従来のものよりもはるかに簡素化されたインターフェイスとは逆に、その内部は、検出タスクを簡素化するための音源分離やマシンラーニング手法など、多くの高度な信号クリーニングおよび前段処理手法は、既存ツールよりも高度かつ複雑で、それに時間を費やしました。
トランジェンスベースの信号ゲートは、使用方法がとても簡単ですが、膨大な量のトラッククリーニングを提供できます。スレッショルド値の設定が常に基準によって制御される従来のゲートと比較して、トランジェントのみがレベルに依存しない方法で検出モジュールを通過させます。見逃されたイベントと誤ったトリガーの間の妥協点を持つことで、レベルに依存しないトランジェントゲートにより、収録時のバックグラウンドノイズに近いレベルの弱いイベントでも分離して検出できます。